ねこのて映画舎は自主映画製作のお手伝いをしてます。映画制作、配給宣伝、
役者募集、上映、ロケ地手配などなど、 困ったときの「ねこのて」お貸しします。

『難民問題・民族紛争を考える上で観ておきたい。クルド人監督バフマン・ゴバディとその作品について』

バフマン・ゴバディ監督についてご存知でしょうか?1969年2月1日、イラクの国境に近い、イランのコルデスターン州バーネに生まれ12歳までバーネで育ったが、内戦により州都サナンダジへ移住。高校卒業後、1992年、テヘランで写真業界でアーティストとしての キャリアをスタート。イラン放送大学へ入学するも中退。映画の制作技術を身につけるには、正式なカリキュラムに沿うよりも、粘り強く短編映画を作り続ける ことだと考え、8ミリフィルムで短篇ドキュメンタリー映画のシリーズを撮りはじめた。短編『Life in a Fog』(99)で評価され、その後、イラン史上初のクルド長編映画『酔っぱらった馬の時間』(00)を製作。

『酔っ払った馬の時間』2002年
国家を持たない“世界最大の少数民族”クルド人にスポットを当てた作品。イラン=イラクの国境地帯に住むクルド人の村。この村は密輸業で生計を立てている。地雷で父親が死んでしまい残された12歳の少年アヨブは家族を支えるため、難病に冒されたマディの手術代を稼ぐため危険な密輸のキャラバンに加わる。このキャラバンは、あまりの寒さに凍える馬(ラバ)に酒を飲ませて酔わせることで密輸品の大きく重いタイヤを担がせ山越えをする過酷なもの。その道中には無数の地雷と武装した国境警備隊が待ち受けている。


 『ペルシャ猫を誰も知らない』2009年
イランのクルド人監督、バフマン・ゴバディが初めて故郷クルドを離れ、大都市テヘランを舞台に描く青春音楽映画。ポップ音楽の規制の厳しいイランで、さまざまな苦労をしながら音楽活動に情熱を傾ける若者たちの日常をゲリラ撮影で切り取る。主演の二人をはじめ、出演者には実在のミュージシャンたちが名を連ねている。ロックやフォーク、ヘビーメタルにラップなどの素晴らしい才能が眠るイランの多様な音楽シーンに驚嘆する。

  『バフマン・ゴバディ DVD-BOX』
『酔っぱらった馬の時間』で知られるクルド人監督、バフマン・ゴバディによる作品集。クルディスタンの小さな村を舞台に、子供の眼を通して戦争の悲痛さや無意味を訴える『亀も空を飛ぶ』と、祖国無きクルド人の姿を描く『わが故郷の歌』を収める。



そんなゴバディ監督の訴える言葉が心を打つ。「今、インディペンデント映画の終焉が近づいている。あなたが映画を愛しているなら、私の映画だけでなく、芸術性の高いインディペンデント映画を守ってく ださい。あなたのサポートを必要としています」と、監督たちがどんなに素晴らしい作品を作っても、世界中で上映できる機会が減っている現状を説明している。

国家を持たず故郷を追われた人々、 スンニ派としてイスラム国と対立を強めるクルド人たちの現状を知ることは、今ヨーロッパで溢れている難民問題を考える上で知っておかなければいけない、対岸の問題として無視はできない問題と言える。